今日の朝10時ころのことです。園内にいたボランティアさんから
蝶(ちょう)が蛹(さなぎ)から出ているところだという電話をもらいました。
さっそく行ってみると、そこにいたのはジャコウアゲハのオスでした。
▲羽化するジャコウアゲハ(アゲハチョウ科)のオス
しかしこの蛹は帯糸(胸の部分を支える糸)が外れ、腹端だけでぶら下がっているものでした。
この時期の蛹は越冬して来年の春に羽化するので、
いつか帯糸をくっつけてあげようと思っていたのですが、
それが今日、羽化してしまったのです。
変な体勢での羽化となってしまったためか、体が180度ねじれて腹部がうまく抜けません。
かなり長い間見守りましたが翅がかなり伸びているのにジタバタするばかりですので、
ちょっと助けてあげることにしました。
本来、自然に生きるものに手助けをすべきではないのですが、
この蛹の帯糸が外れていたのはおそらく人間のしわざですので、
なんとか許される行為でしょう。
▲翅を伸ばすジャコウアゲハ
蛹の腹端を木から外してあげれば大丈夫だと思ったのですが、
それでも腹端が殻から抜けません……。
とりあえずこの状態で翅を伸ばしてもらい、
体が乾いてから殻を外してあげることにしました。
もがいている間に翅が傷ついてしまったのでしょう、翅脈に穴が空いて体液が少し漏れています。
しかし時間はかかりましたがこの後、翅はほぼ完全に伸びました。
羽化したジャコウアゲハは、その大きさ(夏場に羽化するものより小さい)からして春型、
つまり本来は越冬して来年の春に羽化するものだったようです。
越冬蛹は一定期間の低温(冬)を経験しないと羽化しないはずなのですが、
10月に入ってから寒かったり暖かかったりがあったので、
春が来たと間違えてしまったのでしょうか?
残念ながらこのオスは、羽化したものの相手のメスはおらず、
寒さのためすぐに死んでしまうことでしょう。
かわいそうですが、しかたがないですね。
ここで本来の蛹の姿を。
▲ジャコウアゲハの蛹
この蛹は、誰かに木から外されて放置されていたものを保護しました。
帯糸や腹端は木工用ボンドで枝にくっつけてあります。
帯糸が短かったので少し窮屈ですが(本来は胸の部分が枝にくっつかずに浮きます)、
羽化には問題ないはずです。
上手に管理して来年の春に羽化させ、
春の泉の森に羽ばたいていってもらうつもりです。
しかし蛹をはがして放置するなんて、心ない人がいるものですね……。